彼女は神。彼は敵。ぼくは無。



 彼女さえいれば何もいらない。

「何故だキラ」
「なぜって?」
「何故お前は無条件にラクスを信じる」
「そんなの当たり前じゃない」
「『彼女』のようにラクスはお前を利用しているのかもしれないじゃないか!」
「別に構わないよ。ラクスはぼくを信じてくれているもの。少なくとも捨て駒ではないと思うよ」

 ぼくの世界は彼女と彼女以外に二分される。

「……何故だキラ」
「なぜって?」
「何故お前は疑う目で俺を見る!?」
「君がぼくを疑うからだよ。ぼくを信じてもいないのに、俺を信じろって…君、何様?」
「お前こそ何様のつもりだ!」
「ぼく?ぼくは」


『ラクス』のキラだよ。


「ねぇ、キラ。アスラン…邪魔だと思いません?」
「そうだね」


 君の想いはぼくの想い。


「というわけで、君を殺しにきたんだ」
「なっ!キラ…お前にとって俺はなんなんだ?」
「ラクスの邪魔なモノ」
「キラ!!俺はずっとお前を親友だと、信じて疑っていなかったのにっ!お前と言う奴はラクスに唆されて、何処まで狂ってしまったんだ!?」
「嘘つき」


 昔は大切だった人。
 今は何も感じない人。


「ぼくと逢うとき、いつも君が銃を隠し持っていることに、ぼくが気付いていないと思った?」
「!」
「ま、そんなことはどうでもいいんだ。でも」


 彼女を貶す言葉は重罪。


「ラクスへの侮辱は許さない」


 ぼくは躊躇いなく銃の引き金を引いた。






 掠りさえしなかった。
 よほどぼくの腕が悪いのか、あるいは

 まだ彼はぼくにとって、ほんの少しでも大切な人なのだろうか?




 もう己の心さえ分からない。


 だってぼくの心はぼくのものではなくラクスのもの。