城からの抜け出しは思ったよりもあっさりといき、ぼくは拍子抜けしながらもホッとした。
さて…こうして駆け落ちをしてしまったぼくだったけど……暫く後に気付く。
無一文で出てきてしまった!
どうしよう
姫を飢え死にさせるくらいなら……やっぱり、お城に戻った方が。ぼくが姫を無理矢理さらったことにすれば、きっと姫は罰せられないはず。ぼくは処刑されるだろうが構わない。姫の命には変えられない。
「あの姫…」
「姫じゃなくてラ・ク・ス」
「そーだった。ラク…」
「お金の心配なら御無用ですわ」
ぼくの心を見透かしていたラクスは、懐からジャラジャラと無数の宝石を取り出してみせた。
用意周到なラクスに言葉も無いぼくだったがーーーー際輝く宝石を目に止め、真っ青になった。
「そ、それ国宝じゃないの?」
「はい。そうですけど?」
キョトンと頷くラクスにぼくは頭を抱える。
「流石に国宝を盗むのはマズいよ!」
「大丈夫です。城にはレプリカをちゃーんと置いてきましたから」
「(…いつの間にそんなの作らせたんだろ)で、でも売れないよ?売ったらバレちゃうし」
「国外で売れば良いのですわ。大丈夫。それまでの旅費分の宝石もたくさんありますもの」
「…………」
世間知らずだと侮っていたお姫様はどうやらぼくよりもずっと、世渡り上手のようです。
もしかして城から簡単に出れたのも、彼女が何か手配してたからじゃ……あははは…。
色々と不安が過ぎったが、青空に響き渡ったラクスの歌声が、そんなもの見事に吹き飛ばしてくれた。
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