「本当に素敵な夢のよう」
「ミーアさん?」

 思わず漏らした独り言に、ラクスは反応した。

「いえ。今朝また悪夢を見て…今までの私の醜さからすると、あっちの方が現実で、これは夢なんじゃないかなって…」

 それほど、何回もあの夢を見てしまうのだ。

「貴方は醜くなどありませんわ。ただ悪い夢に酔ってしまっただけです。大丈夫。夢と違い、私は生きています。ほら。温かいでしょう?」

 ラクスが、ミーアと手を繋いだ。
 確かに温かい。
 生きた彼女が此処にいるのだ。

「はいっ」

 決して、消えてしまわないように、ギュッと握り返したミーアに、ラクスは思いついたことを、楽しげに告げた。

「今度ショッピングに行きましょう。遊園地に行きましょう。映画に行きましょう」
「ラクス様?」
「楽しいことで心がいっぱいになれば悪夢など見なくなりますわ。それに私、もっと普通の女の子みたいなこと体験したいのです」

 というと…。

「デートとか?」
「Wデートできれば良かったのですが…アスランはモテモテですわね。まぁ私としてはミーアさんの好みがキラではなくて良かったですわ」
「あはは……」

悪夢はもう訪れない。

今の私には、もうあんな選択をする意思が微塵もなくなったのだから 。