「…アさん」


 あたしの声が聞こえる


「ミーアさん」


 あたしの顔が見える

 鏡?

 違う!あたしじゃない。これは


「…ラクス様?」


 ラクスは安堵し、ミーアに微笑んだ。

「お気付きになられました?良かった」
「え?あたし…」

 どうなっている?
 起きぬけで、思考がはっきりしない。

「私を庇って下さいましたでしょう。ありがとうございます」

 思い出してきた。
 そうだ、あたしはーー。

 そこへ少年二人もやってきた。

「あ、良かった。気付いたみたいだよ、アスラン」
「ミーア!良かったっ」

 アスランは心から、心配してくれていたようだ。

「あたしは…」
「ラクスを助けてくれてありがとう。君がいなければラクスは危なかった」

 キラという人も、心からの感謝をミーアに述べた。
 心優しい三人を前にして、視界が涙に濡れていく。

「あたし、あたしごめんなさい!ラクス様!」
「?」

 突然の謝罪に、ラクスは、目を丸くしている。

「怖い…怖い夢を見ていました。ラクス様を…殺してしまう夢です。それであたしがラクスになる…悪夢」

 ほんの少し前までは、実際に望んでいた夢。
 ぼろぼろと涙を零すミーアの頬を、ラクスはハンカチで、そっと拭いた。

「…でも現実では、貴方は私を救ってくれましたわ」

 違う。

「救われたのはあたしです。あたしは…」


一枚の写真

不細工で、ラクスと比べ物にならない顔。


でも

「私はミーアでいたいと気付けたから」

 ミーアが微笑むと、ラクスも嬉しげに頷いた。

「ええ。貴方はミーアさんですわ。今日から友達になって下さいませんか?」

 ミーアは間髪を入れずに、返事を返した。

「っはいっ!」








「どうしました?」

 偽物のアスランが聞く。

「夢を観たの。幸せな夢」

 偽物のラクスが答える。

「どんな?」
「決してもう叶わない都合良過ぎる夢。でも…ずっと夢の中にいたかったわ。現実の方が悪夢だもの」

 偽物のアスランは、理解できないと首を傾げる。

「どうして?俺は幸せだけど?」

 偽物のラクスは、予言するように言った。


「貴方も今に気付くわ…道化師の愚かしさにね」