ある日の下校中、ぼくが鯛焼きを買い食いしていると、一緒に帰宅途中だったクラスメイトのメイリンに告白された。
「私、好きなのっ!」
「ぼくもメイリンのことは好きだよ」
「キラのことじゃないの!」
……なんか酷い。
で、違うとすると。
「メイリンって、そんなに鯛焼き好きだったっけ?半分あげよっか?」
「違う〜っ!肥るからイヤ!そうじゃなくって、ア、アスランさんのことっ!」
「うん。知ってる」
何を今更。な話だ。
連日連夜うんざりするほど、アスランについて話されれば、どんなに鈍い人だって気付く。
気付いてないのはその鈍い人の代名詞である噂の張本人、アスラン・ザラくらいだ。
「告白したら良いのに」
とも、ぼくは何百回も言っている。
ここまで相手が鈍感だと、はっきり言わない限り、永遠にその想いは伝わらない気がする。
だけどメイリンは「わ、わたしになんてアスランさんは高嶺の花よ〜!」とか言ってためらいまくるのだ。男を表すのに花はないでしょう。花は……。
だいたい早く告白しないと、本当に高嶺の花のような美少女にアスランを盗られてしまうんじゃないのかなぁ。
なんだか知らないけどアスランってモテるみたいだし。
幼馴染みのぼくは、何度もアスランが告白される現場に居合わせたりしたからイヤでも分かる
まぁ、総て断っているみたいだけど。
「わ、私ね!もしかしてって、勘付いちゃったことがあるの!」
「何?アスランのセンスの無さに、やっと気付いたとか?」
「違ーう!そんなこととっくに気付いてるもん!そんなとこも含めて、アスランさんが大好きなのっ!」
…そうですか。恋って盲目なんだな。恋したこと無いぼくにはさっぱりだけどね。
そんな恋する乙女メイリンは、とんでもなく見当違いのこと言い出した。
「アスランさんってキラのことが好きなんじゃない!?」
「はぁ!?」
女の勘は鋭い。と言うけれど、メイリンの勘は違うみたいだ。的ハズレにもほどがある。
「幼馴染みに恋をするのは定番中の定番じゃない!」
少女漫画の読み過ぎでは?
「一応キラだって、生物学上は女なんだし!」
「…………あ。そういえばぼく、女の子だっけ」
「キラ!?」
別に自分を男だとも思っていないけれど、学校――共学なのに――で王子様的扱いを受けてると、なんだか性別なんてどうでもよくなってきていた。
「女の子じゃなかったらスカート履いてないでしょ。キラったらもぉ!」
「ほんとだよね。ぼくズボン履きたいよ。それはそれとして、大丈夫だよ。アスランとぼくはただの幼馴染みだから」
「ほんとに?」
「ほんとほんと。だから早く告白しちゃいなよ。じゃなきゃお姉さんに取られちゃうよ」
「うっ!」
実はメイリンのお姉さん、ルナマリア先輩もアスラン狙いらしいのだ。
なんであんなにモテるのかほんと不思議。
世の中顔なのかなぁ。
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