「ラクスに逢って来た」
そう言うと君は予想通り、とても面白い顔をした。
ラクスへの嫉妬と恐怖。ぼくへの憤り。そんな負の感情に歪んだ顔だ。
「さよなら」
「キラっ!」
「ーーを言いに行って来たんだ」
「………え?」
ぽかんとした顔もまた面白い。
オリジナルの記憶ではなく、ぼくの記憶として色々な君の顔を知りたい。
「だからアスランも、もうラクスには逢わないでね。ぼくはもう一生逢えないのに君だけはのうのうと逢えるなんてずるいじゃない?」
なんて言いながら、ぼく自身頼まれたって二度とお目にかかりたくないんだけど、そういうことにしとく。
「ラクスに君が逢わなければ」
本物のキラに君が逢ってしまえば
「ぼくはずっと君の側にいるよ」
所詮偽物でしかないぼくは捨てられてしまうから。
言葉の裏に隠された真実に気付かないアスランは、素直に歓喜に声を弾ませる。
「あぁ!本当に俺を選んでくれたんだなキラっ!」
「うん。これからぼくはずーっと、君だけの『キラ』だよ」
本物のキラではないから、君を選べたんだ。
ねぇ。キラ。
君の忌まわしい記憶は総てぼくが背負ってあげるから、君からアスランを奪うぼくを許してね?
記憶を失ってしまった君は知り得ぬことだけど、君はいつだって『総てを失っても、ラクスさえいればいい』と願っていたからーーだから万が一記憶を取り戻してしまっても、君はぼくの存在を許すだろうし、アスランのことも放っておくんだろうけど。
本当にキラって、とても優しくて、とっても残酷ーー
きっと君にとってこれは幸せな結末なはずだよ。
もちろんアスラン、ラクス、ぼくにとってもーーーきっと…ね。
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