詳しい話はアスランの家の中で、ゆっくりお話することになった。

「ラクスはアイドルだから、ゴシップは厳禁。婚約のことは一切口外するなと、父に口止めされていたんだ」

 お父さんにか…。それじゃあ仕方ないかも。なんていうかアスランのお父さんって、威圧感あって怖いんだよね。

「ところでアスラン、キラのことは前々からお聞きしていましたが、そちらの方は?」

 そちらの方とは無論、メイリンのことである。

「ぼくの友達だよ、ラクス」

 とぼくが誤魔化してあげようとしたのだが。

「ではアスランにとっては?」

 さらりと切り替えされた…。
 アスラン、頑張って上手い事言って切り抜けろ。
 で、アスランはこう返したのだった。

「俺の……好きな人だ」
「ちょっ!アスランっ」
「ア、アスランさん?」

 直球過ぎ!!
 いくら君が正直者だからって婚約者の前でそれは――。

「そうですか。なら婚約は解消致しましょう」

 こちらはこちらでいさぎ良過ぎだって!

「なっ!何を馬鹿なことを!」

 君が馬鹿正直なこと言ったせいでしょ。
 自業自得だと思うよ。

「アスランこそ、その娘を好きと言いながら私と結婚し、私とは形だけの夫婦を演じ、彼女を愛人にでもするんですの?」
「うっ!そ、そんな事は……」

 でもアスランの言ってる事って、詰まる話はそういうことだよね。
 うわ。最低だ。

「元々今日は婚約解消の為に、貴方の許可を戴きにやってきたのです」
「……貴方が俺との婚約を嫌がっていたのは知っています」

 あ、なんだ。ラクスの方が先に拒否ってたのか。納得。

「しかし父が許すはずがない」
「大丈夫ですわ。婚約した当時こそ、叔父様の方が地位も権力も上でしたが、今では立場は逆転しました」

 身も蓋もない言い方だけど、要するにアスランのお父さんが無理矢理二人を婚約させたってことみたいだね。
 善は急げとばかりに、ラクスは携帯を取り出し電話し始めた。

「もしもし。お父様?私、婚約を今すぐ破棄したいのです。はい。後ザラ叔父様がアスランを責めたり、強制的に新しい婚約を推し進めたりしないように釘挿しもお願いしますわ。はい。アスランも私も見つけましたの」

 見つけたって何をだろう。
 最後の会話はよくわからなかったけど、ラクスとラクスの父親の電話はものの数十秒で終わった。

「さぁ。これでお互い自由ですわ」

 メイリンは素直に喜んだのだが、あまりにあっさりと手にできてしまった自由恋愛権に、アスランは不満そうな顔を見せた。苦虫を噛み潰したような口で礼を述べる。

「有り難う御座います。……正直俺は貴方には相応しくはないといつも思っていました。でも貴方のことは嫌いではなかった。貴方はそんなに俺がお嫌いでしたか?」
「私のアスランのことは嫌いではありませんわ。お話するのも楽しかった。けれど好みでは無かっただけです」

 本当にラクスは見かけによらずバッサリとものを言うなぁ。

 これにはアスランも苦笑気味だ。

「……そうですね。俺もそうだったのかもしれない」