ラクスが好みでないなんて、アスランって贅沢。

 そう思ったからつい洩らしてしまった。

「ぼくが男だったら、絶対ラクスに惚れてるのにな」
「キラったら面食い〜」

 メイリンに突っ込まれる。確かにぼくはアスランという美形(らしい)の幼馴染がいたから、感覚が麻痺していてちょっと面食いかもだ。

 と、それよりも。

「地位とか外見よりもさ、ラクスって格好良いじゃない」

 もちろん容姿も抜群だけどさ。
 人間中身も大事だと思う。

「アスランなんかよりよっぽど男前で格好良い」
「ヲイ!キラ」
「ちょっとキラ!言い過ぎ!確かにアスランさんはヘタレで女々しいけど、それを補えるくらい格好良いもん!」

 反論は別に良いんだけど……
 メイリン、それフォローなのかな?
 アスランも喜ぶべきか悲しむべきか微妙な顔をして、君を見ているぞ?

 こほん、とアスランは仕切り直しにわざとらしく咳を吐いて、改めてラクスに向き合う。

「ラクス。俺も君とはこれからも良い友人でいたい」
「ええ。これからも私の良いオモチャ…」
「へ?」
「いえいえ。良い友人でいてくださいね」

 なんか今、ラクスの口から本音が滑った気がしたけど。
 追及しないところからしてアスランは聞かなかったことにしたいらしい。

「それからキラ、有り難う」

 ぼく、なんかお礼を言われるような事したっけ?

「私のことを男前などと言ってくれた方は初めて」

 そりゃ、皆綺麗とか可愛いとか言うよね。
 もちろんぼくもそれを前提に言ってるんだよ?

「新鮮で嬉しかったですわ」

 そうか。彼女を知らなかったり、変な事を口走ったり、ラクスにとってぼくは珍獣のようなもんなのかもしれない。

「キラとなら、私の秘密を共有しても良い。そう思いましたの」

 ……秘密?
 ってなんだろう。


 結局ラクスはこの時、それ以上は口にしなかった。