聞き間違いだと思いたかった。
だがラクスの美しい声はしっかりと耳に焼き付き、同じ言葉をぼくに刻み付けてくる。
おんなのこじゃない?………じゃあ。
「う、宇宙人?」
「あら。キラったら突飛過ぎますわ。もっと単純に考えて下さいまし」
単純にと言われても、脳が考えることを拒否している。
……イヤだ。できれば分かりなくない。
だがラクスはこちらの心情などお構いなしで、答えないぼくになんとしてでも分からせようとする。
「ではヒントです。女の子の反対は?」
うぅ。は、はんたいは……。
「こ、このなんお」
「逆さ言葉という意味ではありませんわ。キラ、これも天然で言っているのですか?」
「えーっと…」
「仕方ありませんわね。では回りくどいことは無しにして」
フワリと身体が浮く。え?と声を上げる間もなくぼくはベットに押し倒されていて……え?
えぇっ!?
「大丈夫ですわキラ。私と貴女の子供なら絶対に綺麗で愛くるしい子が生まれてくると決まってますもの」
こ
ここここここここっ
子っ?
子供!?
「な、何をしようとしてるの君は!?」
「何って…女同士なら絶対に成し得ない人類の神秘を。そうすればキラは私が女ではないと信じて下さるでしょう?」
とんでもなく話が飛び過ぎている!
どうやらぼくは貞操の危機に直面しているらしい。
「待っ!早まるな!早まらないで!!信じる!!信じるから!!!」
誰でも良いからこの状況から助けて!!
「キラー。遅いけど何かあったのか?」
アスラン!!
さすが腐っても幼馴染み!ぼくの人生最大のピンチに助けに来てくれるなんてっ
見直した!
「アスランっ!」
「入るぞ」
ぼくの声を了承と取ったのか、ノックもせずに入って来たアスランは
―――――――開けた扉の前で固まった。
びっくりするのは分かるけど、固まる前に助けてよ!
「アスラ……」
「そうか」
いきなり彼は冷静に頷き出した。
何を納得してるんだアスラン!?
「ラクス。君が俺との婚約を嫌がったのは、君が男に興味がなかったからなのか」
確かにラクスの本来の性別からいえば、そうなのかもしれない。けどそれ以前にやっぱり、タイプじゃなかったんじゃない?君が。
だがアスランはとんでもない結論を出したのだ。
「まさか君がレズだったなんて」
は?
ちょっ!ちょっと待てアスラン!何故そういう結論に?
あ!そうか!アスランからじゃ死角になっていて、ラクスの胸元は見えないんだ。
つまりアスラン的には女が女を押し倒している光景になっているわけで。
「いや。性癖に関して俺はその…軽蔑したりなんてしないよ。……キラも」
待て!勝手に話を進めるな!
「女の子なのに、異性との浮いた話の一つもなくて俺は安心しつつも心配していたんだ」
君はぼくの保護者気取り!?
「お前は同性からもモテているから、もしかしたらと危惧はしていたんだ」
そんなこと思ってたの?
確かにぼくは異性に対してあまり興味が無いし、女の子にもモテるけど、それは単にぼくが色恋沙汰に興味が無く、自分の性別に無頓着なだけで、断じてぼくはソッチ系なわけじゃない!
と怒鳴り返そうとしたのだが。
アスランから気持ち悪いくらい慈愛と慈悲に満ちた笑顔が向けられ、思わずぼくは口を凍らせてしまった。
「心配するな。俺にとって、二人は大切な人達に変わりはないから。それじゃあ、ごゆっくり」
アスランは一人で納得して結論を出し終えるなり、お邪魔だとばかりに扉を閉めて去って行ってしまった。
〜〜〜〜〜馬鹿アスラン!!
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