lie 3



 もう本当の『親友』が誰なのかは、見当がついていた。
 キラの殺気をものともしない、紺色の髪に緑の瞳をした秀麗な青年の姿を思い出す。


  アスラン・ザラ。彼しかいない。






 休憩時間も終わり、レンはキラの元へ戻ってきた。
「キラさ…」


 キラは眠っていた。


 あの残酷な言葉が蘇る。


『死んじゃえばいいのに』


 ……ああ。やっとわかった。 

 それはアスラン・ザラに向けた言葉ではない。
 キラが自身を呪った鎖。

  キラの力ない手の平を離れ、転がった薬瓶からは、錠剤やカプセルが散乱していた。





 致死量にギリギリ届かない薬物を服用し、キラは深い眠りについている。
 動揺し、錯乱したレンにたいしてシンは冷静だった。

「ラクスさんが生きている限りは、キラは致死量の薬物は飲まない」

 シンは無感情に言った。介護に疲れた家族のように。

「キラにとって、ラクスさんだけが真実だから」

 こんなに尽くしているシンは、キラの中で無き存在になっている。キラにとって彼は『親友』を演じる役者。

「キラさんにとって、俺達は全部偽り。代用品だ。でもきっとラクス・クラインだけは代わりを創れない」






 その後、シンの言うとおり一命を取り留めたキラは寝言を言った。

「死んじゃえばいいのにね…ぼく」

 だから無意識に死のうとしてしまう。

「でもぼくはラクスを裏切れない」

 だから無意識に死を避ける。
 キラはまた深く眠る。そして目覚めた時には薬を飲んだことなんて、都合良く忘れてしまうのだろう。




 まずアスランが壊れた。
 アスランはキラを壊した。
 キラは壊れた。

「レン、お前は俺を忘れないでくれ。見捨てないでくれ。もう…俺だって限界なんだ」

 シンがレンの腕を捕える。
 レンも広がりゆく闇に囚われたのだ。


「…シン…さん」


 キラはシンを壊した。
 ならシンに壊されるのはーーー。