もう本当の『親友』が誰なのかは、見当がついていた。
キラの殺気をものともしない、紺色の髪に緑の瞳をした秀麗な青年の姿を思い出す。
アスラン・ザラ。彼しかいない。
休憩時間も終わり、レンはキラの元へ戻ってきた。
「キラさ…」
キラは眠っていた。
あの残酷な言葉が蘇る。
『死んじゃえばいいのに』
……ああ。やっとわかった。
それはアスラン・ザラに向けた言葉ではない。
キラが自身を呪った鎖。
キラの力ない手の平を離れ、転がった薬瓶からは、錠剤やカプセルが散乱していた。
致死量にギリギリ届かない薬物を服用し、キラは深い眠りについている。
動揺し、錯乱したレンにたいしてシンは冷静だった。
「ラクスさんが生きている限りは、キラは致死量の薬物は飲まない」
シンは無感情に言った。介護に疲れた家族のように。
「キラにとって、ラクスさんだけが真実だから」
こんなに尽くしているシンは、キラの中で無き存在になっている。キラにとって彼は『親友』を演じる役者。
「キラさんにとって、俺達は全部偽り。代用品だ。でもきっとラクス・クラインだけは代わりを創れない」
その後、シンの言うとおり一命を取り留めたキラは寝言を言った。
「死んじゃえばいいのにね…ぼく」
だから無意識に死のうとしてしまう。
「でもぼくはラクスを裏切れない」
だから無意識に死を避ける。
キラはまた深く眠る。そして目覚めた時には薬を飲んだことなんて、都合良く忘れてしまうのだろう。
まずアスランが壊れた。
アスランはキラを壊した。
キラは壊れた。
「レン、お前は俺を忘れないでくれ。見捨てないでくれ。もう…俺だって限界なんだ」
シンがレンの腕を捕える。
レンも広がりゆく闇に囚われたのだ。
「…シン…さん」
キラはシンを壊した。
ならシンに壊されるのはーーー。
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